<背景と目的> 近年、20、30歳代の自殺関連行動が増加しており、この世代の自殺予防対策が急務とされている。そこで、我々は自殺の危険因子を見出すために、成人若年層の自殺とストレスコーピングの関係を調べた。さらに、教員のメンタルヘルスの悪化も社会問題となっていることより、教員を対象とした生活の質(QOL)についても追加解析をした。 <対象と方法> 関西圏在住者1545名に調査用紙を配布した。調査内容は、自殺観・自殺関連行動についてのアンケート、ストレスコーピング調査、抑うつ感調査、生活の質(QOL)調査とした。個人情報は収集せず、文章ならびに口頭で本研究の内容と主旨を説明し、同意を得たものからのみ回答を得た。 <結果> 回答を得た1132名(回収率73.3%)中、18-39歳の809名(20.3±4.0歳)について解析を行った。その結果、「自殺をしても構わない」は7.9%、「問題解決手段として自殺もあり得る」は30.0%と高い数値を示した。自殺観とストレスコーピングとの関係は、「自殺をしても構わない」と考える傾向のあるものは情緒優先対処を取りやすいことが示された。抑うつ感との検討でも、自殺念慮が高いものは情緒優先対処を取りやすいことが示された。QOLについては、「社会での役割」に対する満足度が低く示された。また、82名の教員(43.8±11.4歳)のサブグループ解析でも「社会での役割」の低下が示された。 <考察> 今回の結果より、成人若年層では自殺を問題解決方法として選ぶ可能性が高く、情緒的なストレスコーピングが自殺傾性の危険因子として考えられた。また、成人若年層のみならず教員においても「社会での役割」の満足度が低いことが示唆された。適切なストレスコーピングスタイルを習得するための心理的介入方法や、具体的な社会的支援が自殺予防に重要であると考えた。
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