研究課題/領域番号 |
22530779
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研究機関 | 広島女学院大学 |
研究代表者 |
山下 京子 広島女学院大学, 文学部, 教授 (30330666)
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キーワード | 教育系心理学 / 発達障害 / ADHD / 青年期 |
研究概要 |
大学生女子のADHDに焦点を当て、成人用ADHDのチェックリストを作成し、BIS/BAS尺度を用いて、ADHDと報酬系の機能との関連を明らかにする。また、行動制御やワーキングメモリなどの実行機能を評価する課題を実験的に実施し、ADHD、報酬系機能、実行機能との関連を探る。さらに、ADHDに特徴的な時間管理のまずさや、不注意を取り上げ、大学において、ADHDの学生をどのように支援することが必要かを、修学支援、生活支援、就労支援の三側面から検討することを目的とする。 平成23年度では、大学生のADHDについて、これまでの筆者の心理臨床活動を振り返りながら、先行研究を概観し、今後、大学生ADHDにどのようなアプローチが可能であるかについて検討し、その結果を、『大学生ADHDへのアプローチに関する一考察』(山下,2011)として報告した。内容は、大学生ADHDを考える際に、学業途中でドロップアウトしていったADHD事例とは質的に異なるかもしれないと想定されることから、大学生ADHDと一般成人ADHDの比較検討が必要であると示唆された。一方、学童期のADHDは、(1)小学校低学年児童でADHDの診断をされるタイプ、(2)小学校中学年以降で多動や衝動性が問題視されるタイプ、(3)中学生になって初めて相談機関を訪れるタイプに大別され、ADHDの下位タイプの多動-衝動性優勢型や混合型のいずれかであり、不注意優勢型は見過ごされがちではないかと推定された。大学生ADHDは、乳幼児期や学童期から問題になるようなケースとは異なった発達プロセスをたどるのではないかと考えられ、不注意優勢型に着目する重要性が指摘された。 これらのことから、注意機能に注目し、測定課題について、先行研究を概観し、実験課題を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の概観はほぼ終了し、これから本格的な実験・調査に入るための準備を行った。個別の事例は積みあがってはいるものの、個別事例を公開するには人権への配慮等から慎重さが要求されるために、グループ分けを行った上で統計処理をする予定である。そのために、データをもとにした外部に向けた発表に手間取っていることが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
本格的な実験・調査に入る前に、何回か予備実験・予備調査を行う。大学生ADHDと一般成人ADHDの質的な差があることが、先行研究に関する検討から推察されるので、これまで使用する予定であった一般成人用ADHDチェックリストを再検討する必要性が出てきた。また、チェックリストにより、ADHD得点の高群と低群に分けて検討を行う予定であったが、単一の指標でなく、いくつかの領域に分けた指標が必要であると考えられ、データの取り方についても検討が必要である。
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