研究概要 |
大学生女子を対象として、ADHDと、報酬系機能・実行機能との関連を探り、ADHDに特徴的な時間管理のまずさや不注意を取り上げ、大学においてADHDの学生をどのように支援すべきかを検討することを目的とした。 平成24年度では、大学におけるADHD学生の支援に注目し、ADHD学生が同じ障害を抱えている他者と交流することが、ADHD学生自身が自分の特性を理解し、肯定的に自己受容し、必要な支援を取捨選択できるセルフ・アドボカシー・スキルの習得につながると考えられることから、ピアの視点を取り入れた支援のあり方を提案した。まず、大学におけるピア・サポート活動の実践記録を整理し、その結果を『大学におけるピア・サポート活動のあり方についてー11年間のキャンパス・サポーター活動を通して』(山下,2012)として発表した。次に、ピア・サポート活動と、ADHDを含めた発達障害とその傾向のある学生を対象とした支援のあり方を関連付けて検討を加え、『ピア・サポート活動を通してみた発達障害とその傾向のある学生に対する支援のあり方』(山下,2012)として報告した。すなわち、発達障害やその傾向のある学生を対象とした、支援される学生が支援する学生でもある、もしくは支援される学生が支援する側に移行するようなピア・サポートのあり方として、学内外のボランティア活動を活用することが有効ではないかと考えた。その理由として、支援を必要とする人に対する最適な支援は、自分が支援を要する人であるというアイデンティティを形成するのではなく、自分も支援することができるという、より複合的なアイデンティティ形成を目指すものであり、このことが、発達障害やその傾向のある学生にとって、ソシャル・スキル向上につながると考えられることをあげた。
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