研究概要 |
「大学生ADHDへの臨床心理学的アプローチに関する一考察」(広島女学院大学人間生活学部紀要,創刊号,2014,27-37)の題目で、研究の成果を報告した。「大学生ADHDへの臨床心理学的アプローチに関する一考察」の要旨は次の通りであった。 ADHDの特性を持つ大学生への可能なアプローチを検討するために、成人ADHDや、注意機能、実行機能、報酬システム、動機づけ過程に関する先行研究を概観した。すなわち、「大人のADHD」「ADHDと自閉症スペクトラム障害」「ADHDの認知特性」「不注意と抑うつの関連」「ADHDにおける動機づけと報酬系」に関する先行研究を取り上げ、比較検討を行った。ADHDの特性をもつ大学生の適切な理解と対応が、学生の教育的適応を進める第一歩と考えられたからである。また、大学生ADHDへの支援が、実際にどのように行われているかについても先行研究を調査した。結果として、ADHDの特性を持つ大学生をサポートするためには、多様な分野における研究成果が必要であり、基礎的な研究の積み上げと、関連する学問分野における情報共有や連携が必要であることが明らかにされた。すなわち、大学においてADHDの特性を持つ学生への適切な支援を行うためには、注意機能に関する基礎的な心理学研究の成果を具体的に日常場面で応用できるようになることが必要である。また、関連分野における基礎研究にも目を向ける必要があろう。さらに、神経心理学的検査の有用性を高めることが期待される。
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