研究実績の概要 |
本研究は、大学生女子のADHDを研究対象として、報酬系機能、実行機能との関連を探り、ADHDに特徴的な時間管理のまずさや、不注意を取り上げ、大学においてADHD学生をどのように支援することが必要であるかを、学修支援、生活支援、就労支援の三側面から検討することを目的とした。学生相談の臨床場面では、ADHDの診断を持つ学生は非常に少なく、ADHDの特性や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性を持つ学生に出会うことが多かった。したがって、大学生女子のADHDを含めた発達障害全般を研究対象とした。大学における発達障害の学生支援のあり方は、障害の種別ではなく、その学生の抱える困難さに焦点を当てる必要があること、発達障害の学生に対する合理的配慮を検討する際に、学生の抱える困難さと障害の特性との関連を説明することが出発点となることが考えられた。本年度は、学修支援に焦点を当て、「発達障害のある学生の学修支援への臨床心理学的アプローチ」(広島女学院大学人間生活学部紀要,2,43-52,2015)において、大学生のADHDや、ASDの支援のあり方について、検討を加えた。その結果、学修支援においては、学生個人の抱える困難さに焦点づけた個別支援の方向性と、すべての学生を対象とした授業のユニバーサルデザイン化の方向性の二つがあり、後者では、特に授業における適切な情報保障のあり方を検討することが必要であることがわかった。発達障害の学生が、独特の視覚情報処理を有すると推測されることから、視線計測データは、適切な情報保障のあり方の手掛かりとなること、発達障害の学生の授業への取り組みにおける動機づけや時間管理の問題への対応として、時間割引実験における先行研究成果を参考にできることが、明らかとなった。
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