学校現場で,児童・思春期の人たちの心理的問題についての課題を解決する一つの方法として,彼ら・彼女らのメンタルヘルスリテラシー(メンタルヘルスに関する知識,理解,態度)を高める試みは重要ではないかと考える。彼ら・彼女らが心理的問題に早期に気付いたり,支援を活用する力を適切につけることは,生涯にわたり自身のメンタルヘルスを維持・増進した生活を行う上でも有用だと思われる。しかしながらこれまでは,児童・思春期のメンタルヘルスに関する一般化できる情報は乏しく,諸外国との比較可能性をもつ大規模調査は行われてこなかった。 そこで本研究では,豪州で開発された調査票を日本版調査票として開発したもの「児童・思春期のメンタルヘルスリテラシー調査票」を活用して,児童・思春期のメンタルヘルスリテラシーをはかり(研究計画1年目),情報収集など含め国際比較し(研究計画2年目),学校現場における普及啓発活動等の心理教育的支援を探ることを目的とした(研究計画最終年度)。 その結果,(1)若者のメンタルヘルスリテラシーの更なる向上をはかること,(2)メンタルヘルスリテラシーに関して発信される情報の質の検討が極めて重要であること,(3)エビデンスを蓄積し,効果検証を継続して行うこと,(4)コミュニティレベルでの底上げ教育とターゲットを絞った教育の双方が連携して,根気強く展開されることが望まれることなどが明らかになった。
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