本研究の対象となっている各グループ(障害児の親子、大学生、子育て中の母親)に対して継続的にデータを蓄積する一方、本年度には他のリラクセイション療法との相違点を検証するために、自律訓練法と比較検討した。 実際、大学生を対象に二つの方法を実施、「ストレス反応」を指標にその前・後の効果について比較したところ、サート(主動型リラクセイション療法;以下、サート)は自律訓練法に比べて実施後に「身体的疲労感」及び「自立神経系の活動性亢進」が有意に軽減することが明らかになった。さらに、刺激に対する「認知的評価」においては、二つの下位カテゴリの「脅威」・「コントロール」ともに、実施前・後においてサートのみ有意差がみられ、「脅威」が減少し、「コントロール」が増加する結果になった。 「主動」(自分で動く・動かす)概念を軸に展開するサートの技法は、他技法に比べ、セルフ・コントロール感の明確化または向上に直結しやすいことが本年度の研究課題から明らかになった。また、現在蓄積しているデータからも、「主動」を活かす技法であるため、障害児、大学生、成人、小学生など、様々な対象において同様のリラクセイションと心理的効果が得られることが明らかになっている。 これらの結果から、動作法の発展過程で生まれたサートは、心理療法の新たな技法として、健常者から障害者、幼少期から高齢期、日常の心身の健康維持から改善に至るまで、臨床心理学的社会貢献に寄与する可能性が示唆された。
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