平成22年度の研究の目的は、(1)「潜在記憶課題の実験刺激の作成」と、(2)「注意課題の実験刺激の作成」であった。(1)の具体的内容と意義、重要性は、具体的な刺激・課題を作成するにあたり、認知心理学における先行研究を参考に、潜在記憶課題に用いられる単語刺激を作成し、穴埋め課題へと加工した。また、より厳密に統制するために予備調査を行ない、完成率を確認した。その結果、平成23年度に数多く実験参加者のデータを取得するための実験刺激が完成した。 また、(2)については、注意に関する実験心理学の先行研究を参考に、本研究において作成する催眠尺度に導入可能な注意課題の選定を行なった。その結果、従来から使用されてきた「ハーバード式催眠感受性検査」がもっとも今回の実験課題に合致していることが確認された。先行研究において使用されていた刺激を入手し、平成23年度に実験を行う基礎を作ることができた。 最後に、これら上記の作業を進める過程で、催眠感受性と意図的ではない反応から測定された被暗示性との関係について実験が行われた。これは、Gudjonssonが開発した他者からの影響の受けやすさ(被暗示性)について調査する尺度があり、その尺度と催眠感受性との関連について調査したものである。対象は男性40名、女性78名の合計118名であった。催眠感受性尺度については花沢(1974)が開発した尺度を用いた。結果として、両尺度の一部に弱い相関が認められたが、全体として両尺度は関連しないという結果となった。この結果は平成23年に行われる第12回ヨーロッパ心理学会にて研究発表を行う。研究発表の題目は「The relation of Hypnotic Susceptibility and Gudjonsson Suggestibility Scale」である。
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