記憶課題と注意仮題を用いた新たな催眠尺度の作成を行うため、催眠感受性(花沢式簡易催眠感受性テスト)と権威主義的態度(RWA)との関連について、基礎的検討を行った結果、質問紙を用いた調査では関連性を見出せなかった。この結果から、意図的に操作のできない尺度を用いる必要があることが示唆された。そこで、潜在連合テスト(IAT)を用いた権威主義的態度を測定するための刺激を作成するために実験を行った。その結果、一定の妥当性と信頼性を得ることができたことから、IATなど意図的にコントロールすることのできない測定手法を用いることの可能性を示すことができた。これは、通常の意識とは異なる水準で行われる催眠についての研究に関して、意図的なコントロールが介在する可能性の低い潜在的な測定指標を用いることの有用性を示していると考える。これにより、ハーヴァード集団式催眠感受性尺度(HGSHS)とIATを用いた潜在的権威主義尺度との関連について実験を行うことが可能となった。実験の結果、HGSHSとIATの相関係数が有意であり、催眠感受性尺度と潜在的権威主義尺度との間には正の相関が認められた。一方、質問紙法による権威主義尺度との相関係数は有意ではなく、先行研究と同様の結果となった。この結果の再現性を確認するため、追実験を行った。実験にあたっては、学会発表等で指摘を受けた分析方法や実験手順に関する事項を再検討して実施した。追実験の結果、前回の実験とは異なり、HGSHSとIATとの間には相関が認められなかった。HGSHSと自己意識尺度の自己欺瞞の相関係数が有意であり、質問紙による権威主義尺度との間には有意な相関は認められなかった。先行研究と異なる結果が得られたことから、潜在的な権威主義的な態度測定による、催眠暗示に対する反応程度の予測について再考することが必要となった。
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