研究課題/領域番号 |
22530786
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
谷 利樹 弘前大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60392031)
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キーワード | バイオロジカルモーション / 神経線維連絡 / 神経活動 |
研究概要 |
本研究提案では、社会性に富み、バイオロジカルモーション知覚に関わる大脳皮質の領域が、表面に露出した小型の霊長類、マーモセットをモデル動物として、神経繊維連絡を生きた動物から可視化する新たな手法と神経繊維連絡のある複数の大脳皮質の領野から同時に多細胞電気記録を行う方法を用いて、バイオロジカルモーション知覚に関与している大脳皮質領野間の神経繊維連絡と神経活動の相関を明らかにすることを目的とする。 ヒトやマカクザルでバイオロジカルモーション刺激に反応することが知られている上側頭溝付近の領域がマーモセットにおいても同様の刺激に反応することを確認するため、これまで麻酔下の動物に実際のヒトや動物の動きの動画、それらの動画に画像処理を行なったもの、関節の動きを光点や光点を結ぶ線で表したバイオロジカルモーション刺激等の視覚刺激を提示し、これらの刺激に対する反応を上側頭溝近傍の領域から広く計測したところ、実際のヒトや動物の動きの動画及び、それらの動画から作製したバイオロジカルモーション刺激によく反応する領域が見出された。特に動物の動きのなかでも餌を取る腕の動きによく反応する領域が存在した。しかし、これらの領域はバイオロジカルモーション刺激の光点の動きに協調性を失わせた非バイオロジカルモーション刺激にも反応を示した。以上の結果からバイオロジカルモーション知覚時には上側頭溝付近の領域で表現されるバイオロジカルモーション刺激と非バイオロジカルモーション刺激に対する情報の選択を行う領域の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物であるマーモセットの側頭葉連合野における視覚性の刺激選択性の知見は極めて少なく、実験に用いる適正刺激の探索及び、刺激反応部位の同定に時間を要するため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果から上側頭溝付近の領域において餌を取る腕の動きによく反応する部位が存在したため、本年度は他者の餌を取る動きに関係したバイオロジカルモーション刺激に対する反応部位と反応特性を詳細に調べる。さらに、バイオロジカルモーション関連刺激に対して反応性の高い領域に逆行性の蛍光トレーサーを注入し、バイオロジカルモーション知覚に関与すると考えられる領野間の神経結合パターンを生きた動物から取得する。得られた各領野間の神経線維連絡領域において麻酔下の動物から神経活動の多細胞電気記録法を用いた同時記録を行い、各領野間の神経活動の反応強度及び反応の時間特性を詳細に調べる。
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