研究概要 |
異眼間競合時の知覚と瞳孔反応との対応関係の検討を進め、以下のような研究成果を得た。 (1)個人の瞳孔反応を定量的に解析するための手法の開発:これまでの研究結果から、視覚刺激の見かけの明るさ変化と瞳孔反応の振幅の変動との対応強度には個人差があること、また、眼間競合と刺激問競合が闘争刺激の知覚にどのように寄与するかに関しても個人差があり、それに対応して瞳孔反応にも個人差が認められることが明らかとなったため、それを考慮した瞳孔反応の解析方法の開発が重要となってきた。このため、視覚誘発電位の解析のために開発した方法(Young & Kimura, 2010, Documenta Ophthalmologica, 120,121-135)を瞳孔反応に適用できるよう改良し、個人内および個人間で、瞳孔反応の変化を統計的に解析するための手法を開発した。この方法はまだ改良中ではあるが、分析の結果として、見かけの明るさ減少による散瞳反応よりも、明るさ増加による縮瞳反応において、個人差が大きいことなどが確認された。 (2)持続的フラッシュ抑制の基礎メカニズムの検討:持続的フラッシュ抑制(一方の眼にダイナミック・ランダムノイズを提示している間に他方の眼に検査刺激を提示すると、その検査刺激が持続的に抑制される現象)を用いた瞳孔反応研究の準備を兼ねて、心理物理実験によって、持続的フラッシュ抑制の基礎メカニズムの検討を進めた。その結果、持続的フラッシュ抑制は空間周波数および方位に選択的な異眼間抑制を基礎としており、抑制刺激として使われるノイズパターン(通常はモンドリアンパターン)が多様な空間周波数成分および方位成分を含んでいることにより、強力な抑制が生じることが示唆された。
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