研究概要 |
平成23年度において行った研究では,ベータ運動を観察させる条件として,仮現運動事態と実際運動事態を比較したデータの詳細な分析,刺激の「形」が変化する条件における実験,および,刺激の「色」が変化する条件における実験を行った。刺激の「形」が変化する条件は単純な幾何学的図形としての円形と四角形により,「色」が変化する条件は白色と赤色を用いて検討した。 その結果,1.単純なベータ運動観察下では,運動印象が最も明瞭に得られる最適時相条件において,光点刺激の明滅に同期して後頭部V1領域にMEG応答が惹起され,この応答がMT野と推定される部位に両側性に伝播していく,2.これまでに設定した刺激事態では,運動視経路と思われる領域の賦活は認められるが,物体視経路に相当する領域の賦活はみられない,3.最適な運動が観察される場合のMEG信号による脳の活動源推定では,"運動"に対応した成分が刺激提示後100msから頭頂部を中心に立ち上がることが示唆される,4.この活動源推定による分析では,仮現運動条件では両半球間相互作用が認められないが,実際運動条件では両半球間の相互作用があることが示唆される,さらに,5.このMEG信号による活動源は,交替提示される刺激の色や形を変化させても,運動印象が得られる限り基本的には大きな影響を受けない,ということなどが示された。これらの成果の一部は,2011年8月に開催されたThe 34th European Conference on Visual Perception 2011 (ECVP2011)や,12月に行われた日本基礎心理学会第30回大会などで発表された。
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今後の研究の推進方策 |
実験を実際に実施する東京電機大学での実験に関する倫理委員会の承認もすでに得られており,引き続き,平成23年度までと同様な手順で実験が進められる見通しである。平成24年度以降は,3次元的な立体視が成立する刺激を提示する予定であり,この刺激の作成と提示方法が確定すれば本研究が成功裏に達成できると見込まれる。
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