近年、かたちや色などの視覚的意識に相関した脳活動がヒトの視覚皮質で見つかっている。では、視覚的意識に呼応した活動は意識を伴わない活動からどのように生み出されるのだろうか?本研究は、この意識化過程解明の第一歩として、色と形の知覚の意識化過程の情報処理特性をfMRIによる脳機能測定によって明らかにすることを目的としている。具体的には、連続フラッシュ抑制という知覚現象を利用して、色縞刺激が意識に昇る時と昇らない時の脳活動を様々な色と空間周波数について比較して、意識の伝達関数と呼びうるものを多数の視覚野で測定・比較する。 最終年度では、2つの実験を行った。1つめは、初年度から引き続き行っている視覚野の同定のためのもので、特に、同定が困難な高次の色覚関連野を対象に行うものである。前年度までの手法をさらに改良し、刺激を超広視野(~60度)で呈示する実験を実施し、良好な結果を得た。2つめは、意識に昇っている時の色縞刺激の視覚皮質の空間周波数特性である。多数の視覚野を対象に、輝度変調および色変調刺激に対する最適空間周波数を視野偏心度の関数として測定した。実験では、空間周波数が時間的にゆっくりと繰り返し変化する縞刺激を観察している際の被験者の脳活動をfMRIを用いて測定した。fMRI応答が最大になる時点に基づき、各視覚野の各視野位置の最適空間周波数を推定した。すべての視覚野で最適空間周波数は偏心度が増えると低下した。この低下の度合いは輝度縞より赤/緑縞で大きかった。黄/青縞では、最適空間周波数は他の縞のときよりも低い傾向にあった。視覚野間では、最適空間周波数はどの縞でも高次になるほど低下した。現在、無意識下で同種の実験を行う準備をしており、これを前述の意識上での実験を比較することで、研究課題が達成できる見込みである。
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