研究概要 |
まばたき(瞬目)は,ランダムに生じているのではなく,心理過程と密接に関連しながら生じている(Stern, Walrath, & Goldstein, 1984)。2つの実験を通して,瞬目時間分布が興味・関心を探る生理指標になるかどうかを検討した。実験1では,顔写真を画面上に2秒おきに2秒間ずつ次々に呈示し,名前を答えてもらうことで喉まで出かかっている状態(TOT : Tip of the Tongue)を作り出し,それ以外の顔写真の場合と瞬目発生を比較した。瞬目時間分布で見ると,TOTのときは,顔写真が消えた後も瞬目が多く発生し,その発生は人物に関連する状態を言語化した後まで続いた(福田ら,2010)。これらのことから,瞬目発生は記憶検索の困難度と関連していることが示唆された。実験2では,視覚探索課題中の瞬目発生について検討した。視覚探索課題は,すぐにターゲットが見つかるような特徴探索課題と1つ1つ処理していかないと1個のターゲットが見つからない結合探索課題に分けられた。瞬目時間分布で見ると,両課題ともターゲットが1つの場合は,ターゲットへのサッカード定位とともに瞬目が発生したのに対して,結合探索課題においてターゲットが2つあった場合は,1つめのターゲットに対するサッカード定位に瞬目は同期しなかったのに,2つ目のターゲット定位に瞬目は同期した(鎌倉ら,2010)。このことから,瞬目発生は認知処理の終了と関連していることが示唆された。以上の結果をまとめると,瞬目発生は記憶検索や認知処理の終了と関連しており,瞬目と興味・関心の関係を調べるには,これらの実験結果を踏まえて行うべきことが示唆された。
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