研究概要 |
本研究の初年度にあたる平成22年度は,(a)先行研究の網羅的な展望,(b)想起意識に関する実証的なデータ収集の準備,を行った。 (a)先行研究の網羅的な展望 想起意識そのものを網羅的に探究した研究はこれまで行われていないので,まず最初に,そもそも想起意識に関連する知見にはどのようなものがあるのかを,記憶研究のさまざまな領域に渡って渉猟し,分析・検討した。まだ完全に網羅したとは言い難いが,想起意識の全体像をあるていど俯瞰的に捉えることができる段階には到達したのではないかと考えている。そして,想起意識にはどのような種類があるのか,想起意識を規定する要因は何か,想起意識と記憶システムの関係はどのように捉えられてきているのか,などの観点から,先行研究の知見を整理した。その結果,現時点では,(i)複数記憶システム説では,もっぱら想起意識の違いによって記憶システムの違いが定義されてきたこと,(ii)ただし,それに対しては,システム説と処理説の双方から異論が出ていること,などが浮き彫りになってきた。さらに深く検討することは次年度以降の課題であるが,想起意識の全体像の理解について,あるていどの目途が立ってきたと考えている。 (b)実証的なデータ収集の準備 想起意識の主観的な経験の違いを実証的に検討するためのデータ収集の準備を行った。具体的には,面接調査の自由記述データに対する質的・量的な分析を行った。本格的なデータ収集は次年度以降となるが,そのための実質的な準備を進めることができた。
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