研究課題/領域番号 |
22530799
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
今井 久登 学習院大学, 文学部, 教授 (70292737)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 認知科学 / 記憶 / 意識 / 潜在記憶 / 無意図的想起 / 展望的記憶 |
研究概要 |
3年目にあたる本年度は,大きく,(a) 嗅覚を手掛かりとした無意図的想起に関する実験論文の刊行,(b) A. M. スープレナント・I. ニース著「記憶の原理」の訳出と刊行,(c) 想起意識の網羅的な検討,を行った。 (a) 想起の意図を伴わない無意図的想起は,想起意識のひとつとして,潜在記憶や自伝的記憶を中心に研究がなされてきた。中でも,匂いをきっかけとした自伝的記憶の無意図的想起は,プルースト現象と呼ばれてよく知られているものの,実証的な研究はほとんどなされていなかった。そこで,匂いを手がかりとした自伝的記憶の無意図的想起の実験を行って,匂いの同定のしやすさや日常場面での接触頻度などの影響を明らかにするとともに,手がかりの種類によって無意図的想起の性質がどのように異なるかを検討した。 (b) A. M. スープレナント・I. ニース著「記憶の原理」の訳出が終了し,出版された。この本は,すべての記憶を通じて共通に働く7つの原理を提唱したものである。本研究課題との関連では,「意図せずに記憶が想起された場合であっても,何らかのきっかけが必ず存在する」(原理1:手がかりによる駆動),「ある想起意識を,ひとつの記憶システムやひとつの処理と対応づけることはできない」(原理5:混在)が特に重要である。 (c) 昨年度までに引き続き,これまでに提唱され議論されてきた想起意識について俯瞰的に検討し,整理した。その際,ただ羅列的に論じるのではなく,想起の意図 → 想起の過程 → 想起された記憶に対する自覚 という時間軸に沿って整理することが有望ではないかとの視点から検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読付きの論文1本と訳書1冊を刊行できたことことから,おおむね順調に推移していると判断している。想起意識全般の俯瞰と整理についても,試行錯誤をしながら,全体としては概ね順調に進んでいるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度が本研究の最終年度となるので,研究課題の完成に向けて,想起意識の俯瞰的な分析と検討を行い,最終的な形で整理することを目指す。
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