本研究課題の最終年度にあたる本年度は,(a) 潜在記憶研究の中で,想起意識がどのように扱われ,それがどのように変化していったのかをまとめた展望論文の刊行,(b) 外的手がかりがない場合の展望記憶の無意図的想起に関する日誌法研究の国際学会発表2件,(c) 想起意識全般の最終的な整理と検討,を行った。 (a) 潜在記憶は,想起意識を伴わないことが大きな特徴であるとされ,注目されてきた。にも関わらず,想起意識そのものの議論が近年の潜在記憶研究からは抜け落ちており,しかもそのことが十分に論じられていない現状がある。そこで,このような現状は何に由来するのかを,潜在記憶の研究の中で想起意識がどのように位置づけられ,議論されてきたのかを跡づけることで浮き彫りにし,想記意識そのものの議論がなぜ潜在記憶研究から抜け落ちてしまったのかを論じた。 (b) 展望的記憶の無意図的想起に関するこれまでの研究は,もっぱら,時間手がかりまたは事象手がかりがある場合に焦点が当たっていた。しかし,日常場面では,このような手がかりがなくても,展望的記憶の課題が自発的に想起されることがある。そこで,外的な想起手がかりのない場合の展望的記憶の無意図的想起の性質を明らかにするための記憶日誌法を用いた研究について,国際学会で2件の発表を行った。 (c) 想起意識について,想起の意図 → 想起の過程 → 想起された記憶に対する自覚 という時間軸を中心に据えた整理に加え,想起の時点を核として想起意識の整理を行い,その整合性・有効性を検討した。 以上を含め,これまでの研究成果をまとめて,成果報告書として報告する。
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