研究概要 |
今年度は,匂い文脈,背景色文脈を用いて自由再生実験を行った。またBGM文脈の効果を調べるために音楽による気分誘導実験も行った。匂い文脈については,4秒の提示速度では生じるが,8秒の提示速度では生じないことが報告されている(2009)。そこで,今回は,8秒の提示速度で,文脈(SC vs.DC)の1要因実験参加者間計画を用い,40名の大学生を対象として保持期間中に匂いに対する脱慣習化操作を行った。連想価90以上のカタカナ清音二音節綴り20個を,ターゲットとして1個ずつコンピュータディスプレイ上に提示し,自由な方略で学習させた。その際,学習時と同じ匂いのもとでテストする条件をSC条件,異なる匂いのもとでテストする条件をDC条件とした。その結果,8秒/項目でも有意な匂い文脈依存効果が生じた。背景色文脈については,Isarida & Isarida (2007) exp.1に背景色が単純に交替する条件を加え,2要因(背景色変化×文脈)混合計画で,46名の大学生を対象として実験を行った。2要因の分散分析の結果,背景色変化の主効果と交互作用は有意ではなく,文脈の主効果が有意であった。音楽による気分誘導実験では,音楽聴取をする場合としない場合とで,色の見方に変化があるかどうか調べるために,60名の大学生を対象として,色見本の評定実験,およびその評定の前後に気分評定を行わせた。その結果音楽聴取による気分誘導は見られなかったが,色彩の情動反応では,一部色の見方に変化が見られた。 以上の実験結果は,学会で発表するとともに,さらにデータを追加して,国際誌に投稿する予定である。 また,昨年度行った複合場所文脈の実験結果をまとめて,国際誌に投稿した。その結果,修正と追加実験の要請があった。これに対応すべく準備している。
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