哺乳動物の定位行動に深く関わっていると予測される上丘の局所的機能分化を探るため、回転かごを用いたラットの自発運動量の測定方法を確立し、上丘の局所的破壊との関連を調査した。今年度は、主に上丘前方部(吻側部)に焦点をあて、恒久破壊による自発運動量および視覚弁別課題への影響を詳細に解析した。実験に使用した回転かごは、かご内に障害物を取り付けスムーズに走ることを困難にした「ハードル有」と通常の回転かご「ハードル無」の2種類を設置し、ラットが走るかごを自由に選択できるようにして、いずれの回転かごを好んで使用するかその傾向を同時に調べた。 回転かごによる自発運動量を上丘破壊前後で比較すると、上丘前方部を破壊したラットでは、破壊前に比べて有意に回転かごを走る量が増加し、上丘後方部を破壊したラットでは、破壊前に比べて有意に回転かごを回す量が減少した。スキナーボックスを利用した簡単な視覚弁別レバー押し課題の成績は、上丘破壊後、一時的に低下を見たが、前方破壊群、後方破壊群ともに数日以内に破壊前の成績に回復したことが確認された。しかしながら、視覚弁別レバー押し課題の視覚刺激が呈示されてから反応するまでの時間を解析したところ、上丘前方部を破壊した集団では、その反応時間が短縮されている傾向が見られた。上丘後方部破壊群ではそのような傾向が見られなかった。 以上のような結果から、上丘において前方部は自発運動や衝動の抑制に関わっている可能性が示唆された。
|