研究概要 |
本年度の研究は、欧米の近代の学校制度にならって設置・整備された師範学校において、教育の「心理学」が教科として位置づけられ、教科目化されていく過程を、「教育学研究」に掲載された「心理学」論文・報告・資料を基に明らかにした。 師範学校における教科目の整備は、明治8年中學師範学科の設置後である。明治10年に、小学師範學科は2年半、中學師範学科は3年半とし、後者に初めて心理学が学科目として導入された( 東京高等師範学校・東京文理科大学, 1931, p.17)。欧米を模して学年及び教育内容・教科目の編成が行われたことが推察できる。中學師範では、心理学は第2学年の前半期・第4級と第3学年前半期・第3級で開講された。小學師範科には心理學は学科目に含まれていない。さらに、明治12年2月に豫科( 2年)、高等豫科( 2年)、本科( 1年) の3科を設け、小学師範學科は豫科・本科を修了し( 3年)、中學師範學科は豫科・高等豫科・本科を修了する( 5 年) ことを要件とし、心理学は本科第3年・5年の下級で開講された 。小學師範科も中學師範科も共に本科に進むことから、両科とも心理学が必修になっていた。教授要目は明治43年に制定され、心理学に関しては大正14年、昭和6年、昭和12年に改正された。最後の改正では、心理学は、一部3年で週2時間の必修に、さらに4年に週1時間を加えて必修化された。教科書は、文部省の指定であったが、心理学の教科内容は十分とはいえなかった(依田, 1941)。学制は、3年次に一般心理学を履修し、4年次に教育・児童に関する心理学(幼児期の心理、児童期の心理、青年期の心理、職業指導の心理的基礎)を学んだ。
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