研究概要 |
H25年度には、本科研の最終まとめとして、10月13日に教育史学会第57回大会(於福岡大学)において「1920年代から1930年代ドイツにおける家族と教育」というタイトルで、消費社会の進展における家族の変化について、学会発表をおこなった。主たる資料としては、多子家族全国連盟の機関紙である。 1920年から1930年代にかけて、ニュースレター的な扱いであった機関紙が、次第に、その紙幅を増やしていくと同時に、広告をふやしていった点に注目した。当初、第一次世界大戦後の荒廃のなかで、生活に不可欠な食料や洗剤という日曜製品にかかわる広告のみであったのだが、次第に時計やカメラといった高級品に関する広告が増加した。また当初は生活のための補助金や住居を要請するような記事があったのであるが、1930年代には、銀行でローンを組んで自宅を手に入れることをすすめるような広告が多く見られるようになっていった。特にナチス期にはいって広告量は飛躍的にのびていき、ナチスの活動やヒトラーの宣伝媒体となると同時に、快適な生活の提供する消費社会像が広告を通じて提示されることが明らかになった。 また、前年度におこなったジェンダー史学会で学会発表をおこなった幼児教育職と家族の関係に関する分析の一部は、「ドイツにおける社会国家形成と教育福祉職の成立―ジェンダーの視点から-」(廣田・橋本・岩下編『福祉国家と教育 比較教育社会史の新たな展開に向けて』昭和堂, pp.167-186)という論文のなかでその一部を成果として、11月に刊行した。 また年度の最後には、プロイセン文書館およびベルリン図書館に所収されている資料の最終確認と刊行状況の確認のためドイツに渡航した。
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