「協同的な学びづくり」では、グループでの活動を通し、他者と切磋琢磨して協同の精神を培うと同時に、学習の効果をも相乗的に高めることのできる指導力が求められる。授業観察評価の開発は、この授業者の指導力の水準を的確に評価し技法改善に生かすためのツールとなる。他方、グループ活動には可視化が容易でない能力要素が多分に含まれている。個人の力というより、他者との関係で構成的に発揮される相互作用的な力(社会コンピテンシー)が学習者に身に付いているかどうかが問われる。即ち、本研究を通し常に立ちはだかった課題性として、グループ活動を授業評価の対象とするということは、本来、一斉学習のような教師‐生徒の関係下よりも、教師の統制が利きにくくなるという特殊な状況下での授業を評価するということであり、従来の観察評価の常識はそのまま通じず、ここに開発の意義も見いだされた。これについては、優れた活動状況が規準としての記述語を通してありありと描かれ、それが一貫性と体系性をもちあわせるものであれば、可視化しにくかった非認知的な力に対する評価・改善の展望を拓くことになる。 授業診断指標の具体化に当たり、ドイツにおいて精力的に実践展開が図られている協同学習論に着目し、観察診断(モニタリング)による授業評価に資するものとすることを視野に入れて開発を行った。主なものとして、(1)グループが効果的に機能しているかどうかを観察する視点を定めた「KT観察視点」、(2)自律的参加度を診断する社会コンピテンシーの観察視点を定めた「グリーンのコンピテンシー・チェックリスト」、(3)グループ成員が相互に積極的にかかわろうとする参加状況を観察する視点を定めた「ブリューニング/ザウムの参加状況の判定」、(4)成員個人・グループ・対象(学習課題)への取組という3視点を交錯させた「クリッペルトの参加状況判定の3視点」が挙げられる。
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