今年度も、昨年度までと同様に、研究代表者・研究分担者以外に6名の研究協力者が自ら分担する研究課題を設け、それに即して研究を進めていった。とりわけ今年度は最終年度であるので、各自が研究のまとめを意識して研究を行い、研究課題についての報告と相互批判を通して研究を練り上げていった。 その中で、一番大きな研究成果として指摘できることは、中学校と高等女学校の教育が制度的にどのように異なっていたのか、その背後にどのようような男女観が存在していたのかを明らかにしたことである。中学校と高等女学校の間に、修業年限や学科目の相違があることはよく知られているが、それだけでなく、男女別学の教育には他にも制度的な差異が存在していた。具体的にいえば、高等女学校にも中学校にもあった「実科」の教育内容が、前者における実科とは裁縫教育の充実や都会への遊学志向への対処から生まれたものであったのに対して、後者の場合は進学志向への対処という課題から生じていたことである。言葉を代えていえば、中学校教育には、高等教育の予備教育なのか、中等教育の完成教育なのかという問題が常に存在していたのに対して、高等女学校教育にはこのような問題は存在していなかったことになる。また中学校は業績主義にのっとって試験を重視し、飛び入学も存在していたのに対して、高等女学校には中学校のような厳格な試験が制度的に存在していなかった。というのも、中学校は高等教育機関との接続問題を常に意識せざるをえなかったのに対して、高等女学校は完結教育として制度設計されていたからである。 これらの点は、これまでの研究では必ずしも明確にされていなかったことであるが、中等教育におけるジェンダー構築をより的確に考察するためには必要不可欠なことであり、このことが明らかになった意義は大きいといえるだろう。
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