研究課題/領域番号 |
22530821
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 理恵 広島大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (80216465)
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キーワード | 旅 / 旅日記 / 伊勢参宮 / 神職 |
研究概要 |
近世後期は、各地の名所を巡りながら伊勢に参宮する旅が民衆のあいだに普及したといわれる。この背景には、街道や旅宿などの物理的な諸条件の整備もさることながら、旅を計画し遂行するための知識や教養、計算能力、コミュニケーション能力が民衆のなかに定着していたことがあったと考えられる。そこで、人びとの教養のありかたや旅の学習効果を分析することを目的に、旅日記の収集を進めた。 従来の近世旅研究は主として東日本出発の旅日記を使用し、西日本出発の旅日記はほとんど発掘されていない。そこで、本研究では、西日本出発の上京・伊勢参詣の旅日記を渉猟することを目指している。本年度は以下の西日本各地の図書館・文書館におもむき、昨年度に引き続き、一次史料としてのあるいは自治体史などの刊行物に掲載された西日本出発の上京・伊勢参詣の旅日記の調査をおこない、それらを複写あるいは写真撮影して収集した。また、収集史料をデータベース化する作業も開始した。これは最終年度に作成する報告書に掲載する予定である。 大分県立先哲史料館および図書館…旅日記4点、刊行物5点。 徳島県立文書館および図書館…旅日記7点、刊行物2点。 神戸市立文書館および図書館…刊行物3点。 岡山県立図書館…刊行物4点。 愛媛県立図書館…旅日記6点、刊行物2点。 高知県立図書館…刊行物3点。 特に神職は京都の本所に赴きその記録を後世に伝える必要があり、詳細な上京日記を残す場合があった。そうした意味で、広島県山県郡井上家に残された神職の上京日記(文化3年・文政13年・天保13年・弘化5年・嘉永元年)は特筆に値する詳細な記録である。昨年度にひきつづき、その翻刻作業およびデータ入力をおこなった。これは最終年度に作成する報告書に全文を掲載する予定である。 また、昨年度から収集した旅日記の一部を使用し、平成24年3月に芸備地方史研究歴史講座において「近世旅人のみた広島」と題して発表をおこない、厳島神社が名所化する経緯を概観した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、東日本大震災後の財源確保のために補助金がカットされる可能性があるとのことで、史料調査のための出張を予定通りいれることができなかった。補助金全額が配分された後に史料調査に行くことはできたが、日程などの関係で当初予定していた九州南部に調査に行くことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的を遂行するためには、史料収集が急がれる。平成23年度に史料調査を予定していたにもかかわらず未調査の九州南部には平成24年度に早急に赴き、史料調査を完了させる予定である。調査終了後には、収集史料を整理するとともに、史料翻刻をおこない、報告書作成作業にはいる。その作業過程において、研究目的を遂行するための分析材料がそろうはずなので、同時に分析をおこない、論文を執筆し、学会で発表する予定である。
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