この研究では、明治期における小学校理科の誕生と実業教育施策の関連を分析した。当時の日本は農業国であったので、実業教育のなかでも特に農業教育に重点をおいて調査をした。農業教育については、長崎、広島、新潟に設置された農学校に関して、その設置から廃止までの経緯を明らかにした。これらの農学校は設立から廃止までが数年程度の短寿命の学校であり、これらの研究から当時において農業教育をめぐる社会の状況を把握することができた。また、小学校理科誕生に直接かかわる研究では、1885年における文部省の初等教育施策の推移を詳しく解明した。ここから、理科の誕生が初等教育政策の外側からもたらされたことが強く示唆された。
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