研究代表者〔山崎〕は、これまで、静岡大学教育学部卒業生で主に静岡県下の小・中学校に勤務する教師を11の卒業コーホート(Graduate Cohort:以下GCと略)に編成し、彼(女)らの「教師の発達と力量形成」に関する諸事項を自記式質問紙法(郵送留め置き法)によって把握することを目的として、1984年以降5年間隔で継続的に調査を実施してきた。今年度の重点課題として取り組んだ調査は、その継続調査の延長線上にある第6回目にあたるものであるが、今回は調査対象者を第10GC、第11GCに絞るとともに、新たに2008年~2010年3月に卒業し入職していった初任期教師たち(第12GC)を調査対象に加え実施した調査(第6回調査:2010年8月調査実施)である。回答の回収率は、全体で42.1%(実数:208名)であった。その基礎分析報告は、調査に協力していただいた静岡大学の菅野文彦氏及び望月耕太氏とともに、下記掲載の紀要等に執筆・掲載した。 本調査結果からは、彼(女)らの教職選択の時期が小・中学校段階と早期化してきていること、その要因は同段階で出会った恩師からの影響が大きく、教職に関するイメージ形成も初任期の実践もその恩師から受けた教育体験に負うところが大きいこと、また初任期における教職活動を支える要因は、先輩教師たちのアドバイスや児童.生徒との交流経験などといった日常のインフォーマルなものが圧倒的に大きいこと、したがって相談相手もまた身近なインフォーマルな関係性の下にある先輩教師や同世代教師たちが中心であること、さらには制度化され時代が求める様々な教育課題を指導される初任者研修においても若い教師たちがそこから得るものは同世代教師たちとの交流と研修後も続く人的ネットワークであった。今回の調査で新たに導入したものに「大学における実践現場の参加体験」に関する設問がある。その設問に対する回答から、若い教師の中でもさらに年齢の低い者たちになるほど参加体験率は上がっており、授業参観・支援活動や障害をもった児童・生徒への支援活動などの体験の中で、彼(女)らは学校・教師.子どもの現状・実態を体験的に知るとともに実践力もまた獲得していっていることがわかった。
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