研究課題/領域番号 |
22530832
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小野 雅章 日本大学, 文理学部, 教授 (70224277)
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研究分担者 |
冨士原 雅弘 東海大学, 課程資格教育センター・教育学研究室, 講師 (30339238)
宇内 一文 立教女学院短期大学, その他部局等, 講師(任期制) (60546266)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国旗 / 国歌 / 学校儀式 / 三大節 / 天皇制と教育 |
研究概要 |
本年度は、4年計画中の3年目に該当する。既に2年間の研究において、本研究課題の基本的な研究の枠組みは出来上がり、それにもとづいた史料収集もおおよそ八割程度は終えていた。そこで、本年度は、これまで収集した史料の整理・分析を中心にしながらも、これまでに史料調査・収集を行っていなかった地域、あるいは時間的制約で充分な史料調査・収集ができなかった地域への史料調査・収集を行った。今年度の研究実績は、これまでに収集した史料の整理・分析と未調査地域を中心とする、補足的な史料調査・収集が中心であったっと総括できるが、これらを詳細に示すと、以下のとおりになる。 1.収集し終えた史料の整理・分析 これまでに収集した史料のなかで、特に重要と思われるもののひとつが、「国旗及国歌」(国立公文書館所蔵 分類文部省59 拝架番号3A 30-5 1046)であろう。この簿冊には、1920年代後半から40年代にかけての、国旗制式に関する文部省内の検討の跡が詳細に判明する史料が多々含まれている。マイクロフィルム化するとともに、詳細な件名目録を作成した。さらに、本研究課題にとって特に重要と思われる史料群は、プリントアウトを行い、情事閲覧が可能な状況にしている。その他、新聞記事などもデータベース化を行った。 2.史料の補足的調査・収集 、祝日の学校儀式を県単位で通達した愛知県関係の史料、「紀元節校長」として名をはせ、戦後初期、建国記念の日が「国民の祝日」となっていない時点で、2月11日に「紀元節」学校儀式を大々的に挙行し、戦後の祝日学校儀式のあり方に大きな波紋を投げかけた、高知県繁藤小学校に関する史料を収集した。愛知県では公文書、新聞記事、高知県では、新聞記事、当事者の証言、さらには、関係者の手記などを調査・収集した。これらは、既に訪問した地域も含まれているが、研究の進捗状況にとっては有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の達成度は、おおむね順調に進展していると自己評価している。その理由の最も大きな要因は、歴史研究にとって必要不可欠な史料の調査・収集が比較的順調に行われたことによる。とくに、学校儀式関係については、フランスを中心とする西洋教育史関係の研究者との交流により、近代日本の学校儀式とフランス革命直後の学校儀式との関係性など、従来の研究が指摘してこなかった、新たな一面を描き出すことの可能性をもたらしたことである。明治初期の多くの小学校で行われた開校式や開講式、さらに成績優秀者への褒賞などは、近代フランスの事例にも顕著であることが明らかになった。この点は、本研究課題にとって重要な、近代日本における学校儀式の歴史的背景を明らかにするという目的に大きく貢献したものと考えられる。 第二点は、これまで、比較的順調に史料の調査・収集ができたことである。特に、国旗と学校儀式に関する史料の調査・収集に大きな成果が見られた。①上述の「国旗及国歌」(国立公文書館所蔵)のほか、②府県庁文書の中に含まれる学校における国旗普及の過程を実証すべき通牒類や政策文書(奈良県庁文書、大分県庁文書、宮崎県庁文書、群馬県庁文書など)、③国府校江口静水「日章国旗に関する文献」(手書き史料)、④財団法人国民教育奨励会「昭和三年九月十五日 国旗の制式及びその作法」(国民教育奨励会、1928年)、⑤中央紙・地方紙を含めた国旗と学校関係の記事など、従来の先行研究を乗り越える、あるいは修正することになるであろう、重要な史料を発掘したことである。これらの成果は、想定以上の成果であった。 一方で、従前の計画通りに信仰していない面も若干ある。それは、研究成果の公表である。前年度までは比較的順調であったが、今年度は史料の整理・分析が中心であり、この点に若干の遅れが生じたが、最終年度でこの点を補いたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、来年度をもって終了を迎える。従って、今後の研究は、研究のまとめを念頭に置くとともに、今後の課題の発見も含めた姿勢で研究を進めたいと考えている。すなわち、今後の研究は、研究代表者・分担者によるこれまでの研究成果の公表、これまで収集した史料の公開準備、そして、今後の課題の提示という三点に絞ることにする。その詳細は、以下の通りである。 先ず、研究成果の公表であるが、研究代表者・分担者それぞれが、所属学会(教育史学会、日本教育学会など)において研究成果の報告を行うとともに、学会誌(『教育学研究』『日本の教育史学』『日本教育史研究』など)へ論文の投稿を行う。さらに、研究代表者は、これまでの研究の成果に対する批判などをもとに、研究内容の微調整を行い、その結果を単著として出版すべく、その準備に当たりたいと考えている。こうして、この4年間に受けた科学研究補助金の成果を公にしたい。研究成果の公表に向けて、少なくとも、2回の研究代表者・研究分担者による研究会を開催する。 つぎに、収集した史料の公開準備である。これまでも収集した史料については、整理を行い、公開可能な状況にしてきたが、研究プロジェクトの完了にともない、正規な史料目録を作成するとともに、これまで収集した史料群も整理番号を振り、研究室内の保存庫に配架し、他の研究者の閲覧要望に常に対応できるような状況を作り上げることにする。 そして、今後の課題の提示である。これまでの研究実績により、近代日本の学校儀式と国旗・国歌との関係について、従来とは違った側面を明らかにすることができたが、今回の研究プロジェクトのその全体像を明らかにしたとは言い難い。現時点でも、学校儀式における国旗導入のプロセスなど、国旗と学校儀式についての解明はできたものの、国歌については残された課題が認められる。この点についての整理を行いたい。
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