本研究は、近代日本の農本的地域教育実践を、民衆的・自治的な性格をもったものとして、教育史の文脈に位置づけることを目的としている。当面、対象時期を戦前昭和期に限定して、農村共同体の維持・発展をめざして取り組まれた各地域独自の教育計画・教育実践を総合的に調査することとした。こうした地域について、全国十数か所の調査研究を行なった結果、結論的にいえば、農本的地域教育実践の多くは、全体として、農村共同体の伝統的な自己形成の営みを尊重しつつ、地域独自の全体的な地域教育計画の構築を企図していた。それらは、総じて近代公教育への批判を内在させており、近代日本の地域教育自治の一つの試みであったということができる。
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