本研究は、わが国の学校教育における「いじめ」と「不登校」との関係を明らかにするとともに、初等・中等教育の区切りの変更を提言することを目的としている。初年度の研究成果は、おおよそ以下のように要約できる。 1.わが国の中学校教育相当期におけるいじめや不登校などの問題行動については、世界的な共通の現象であり、先進各国においても研究活動や国際的シンポジウム等が盛んに行われている。 2.しかしながら、先進各国におけるいじめの発生件数は学年が上がるごとに増加する右肩上がりであるのに対して、わが国の場合には中学校1年次がピークとなっており特異な現象を見せている。この傾向に対する識者への聞き取り調査では、わが国の場合、国民の学校あるいは児童・生徒に対するイメージが固定化し、学校段階と国民的イメージが結びついていることが大きな要素であることが判明した。 3.近年のいじめや不登校などの問題行動に関する研究文献のほか、新聞記事や雑誌記事等をおよそ1970年代以降すべてデータ・ベース化し、その発生の歴史的特徴を明らかにした。その結果、臨時教育審議会の設置される1984年代前後が第一のピークであり、また問題行動の低年齢化が問題化された2000年前後が第二のピークであることがわかった。 4.近年のいじめ問題には、IT技術の進歩によりインターネットを通じたいじめ件数が増加する傾向にあり、このことは他の国々においても同様の傾向であることがわかった。識者やいじめ問題関係者への聞き取り調査では、こうした傾向は年々高まり、学校のみならず地域や社会全体で対応策を講じる必要性があるという。次年度の調査にこの結果を活かしていきたい。
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