本研究は、わが国の学校教育における「いじめ」と「不登校」との関係を明らかにするとともに、初等・中等教育の区切りの変更を提言することを目的とした。得られた結果及び知見は、以下のとおりである。(1) わが国ではいじめの発生は小学校高学年から上昇し、中学校1年でピークを迎えるGが、アメリカの学校では、いじめ発生は学年が上がるごとに増加していく傾向にある。その要因としては、「学年」意識が強いこと、校内の教員意識や協働体制が整備されていること、「多様性」「平等性」についての教育が重視されていることが挙げられる。(2)過去25年にわたるわが国の新聞記事にみる「いじめ」記事件数は、1986年からは横ばい状況であったのに対し、1995年頃から増加し始め、その傾向は2000年まで続いた。その後減少傾向にあったが、2006年から再び上昇した。(3)月別にみた「不登校」記事件数は、一年を通じて平均的にみられるが、なかでも4月~5月にかけてと、10月~11月にかけてが、やや目立っている。(4)「いじめ」「不登校」に関する図書数について、Webcat検索した結果(5カ年毎)1996~2000年が1309件、2006~2010年が1336件と多く、またいじめ問題は、およそ臨時教育審議会以降の1986年から多く取り上げられた。(5)A大学の学生アンケート調査結果では、①いじめと不登校との相関関係あると思う(89%)、②いじめの最大の要因は思春期である(73%)、③いじめをなくすには家庭教育が重要である(47%)、④6・3・3制より5・3・4制の方がよい(59%)、となった。学生の多くは移行期教育の見直しに関心が多い。(6)改革提言は次の4つである。①高校教育の中間的性格・役割を明確にする。②結ぶと同時に分ける作業が求められる。③点から線・面への移行を指向する。④子どもの発達権・学習権の保障を実現する。
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