研究課題/領域番号 |
22530849
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 和孝 埼玉大学, 教育学部, 教授 (90182427)
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キーワード | ベトナム / 高等教育 / privatization / 市場経済 / ドイモイ |
研究概要 |
H22年度は、(1)「ベトナム高等教育改革アジェンダ2006-2020」によって急速に展開している高等教育民営化の実態を調査することと、(2)新たに出現した私立大学の連合組織の実態とそこが把握している私立大学の課題についてヒアリングを行うことを目的とし、元教育大臣経験者を含め、高等教育ドイモイを推進した政府関係者・私立大学長などを参加させるベトナム高等教育改革に関する報告書を作成する可能性を探ることを計画とした。調査の結果、大学privatizationを推進するために組織された民立大学協会は、明確な組織体ではなく、政策遂行のための委員会組織に類似し、独立した組織的活動を行っていないためむしろ、その構成メンバーとの個別インタビューを実施することが有効であることが判明した。結果、元文部大臣、Nguyen Trai大学大学長(民立大学協会副会長)、Thang Long大学長、Hoa Sen大学長、および国家大学問題委員会専門委員のPham Phu教授などと積極的なインタビューを実施した。 それによって、2000年代代から始まった大学改革は、これまで指摘されてきたようなGATSやWTO加盟のための「外圧」によるものではなく、ベトナム解放闘争を担った時代の進歩的知識人によって着手され、それが、2006年のWTO加盟を政治課題とする高等教育改革策のなかで変質させられていったものであることが明確となった。また、在のprivatizationの動きに対しては、質保障確保の観点から、評価制度が導入されたものの十分に機能しておらず、無原則的な量拡大をどう規制し、質を保証するかが新たな課題となっていることが明らかとなった。こうした点は、アジア諸国の大学の評価問題にも共通する側面を有し、ベトナムや中国からの留学生の研究テーマ指導にも大いに役立つとともに、大量の収集資料の一部は、留学生の博士論文作成に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、調査対象として想定していた組織と人物が適切ではないことが判明し、前半期、情報の適切な入手先を探し出ずこと1に時間を費やさざるをえなかったが、後半は、おおむね順調に調査は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
高等教育ドイモイに関わった重要人物から、報告書のための原稿を集めることができた。この翻訳および最近の情報を加えた報告書の刊行が次年度の計画である。
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