日本、イギリス、ニュージーランドの学力に関する目標設定とテストをめぐる政策と政策文化を分析するため、文献研究と政策関係者(教育行政官、学校教職員、保護者、地域団体)を対象とするインタビュー調査を実施した。イギリスでは本年度は特にイングランドとウェールズとスコットランドの間の相違に着目する一方、ニュージーランドでは引き続きナショナル・スタンダードの実施過程に関わる研究を海外共同研究者のMartin Thrupp教授(ワイカト大学)とともに進めた。さらに国内では特に学力の低さが議会や地域経済界で大いに問題とされている、ある地方自治体で進められている学力向上政策に着目して、その政策形成過程を文献調査及びインタビュー調査によって詳細に分析し、今後の展開過程をフォローするためのベースラインを準備した。具体的な研究成果としては、イギリス、ニュージーランドとの比較の視点を活かしながら、日本の学力に関する目標設定とテストをめぐる政策がいかに学校の文化となり、教職員の思考や行動、職業アイデンティティにいかなる影響を与えているかを分析した研究論文を国際雑誌に投稿し、掲載されたほか、ニュージーランドの教育政策に関する学術書の翻訳作業を大学院生の協力を得てほぼ完成した。これらの研究成果は日本における学力に関する目標設定とテストをめぐる政策について、イギリスやニューランドにおける同種政策の国際比較研究の成果に照らして、その成果と限界と問題点を明らかにするものであり、今後の展開に対する重要な示唆を与えるものである。
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