平成22年度は、横浜市立総合高等学校、大東学園高等学校、岡山県立落合高等学校、長野県辰野高等学校、埼玉県立川口北高等学校、東京大学附属中等教育学校を訪問し、生徒・教師・保護者による三者協議会・生徒・保護者による二者懇談会を傍聴するほか、関係者への聞き取りを行った。 また、10月に北京大学で行われた国際シンポジウムで「Theoretical Issueson Value and Moral Education」と題した報告を行った他、3月には開かれた学校づくりに関する研究集会で報告を行った。 具体的には、 (1)日本の高校では、異質な集団と接する中で意見表明を行うことによって生徒の主体性・当事者性を育むことが重要な目的とされている、 (2)いずれも意思決定(ガバナンス)への関与ではなく協議への参加という形態をとっており、決定における当事者性を発揮することは想定されていない、 (3)協議という形態は、「資格としての当事者性」と「目的としての当事者性」の二重性を可能とするものであり、決定(ガバナンス)に準ずる次善の形態としてではなく、教育過程にふさわしいものとして積極的に選択されている、 (4)教育過程と位置づけられることにより、教師は当事者の一角を占めながらも同時に、場と教育要求をコーディネートする役割を担う二重性が要請されている、 (5)学校という閉ざされた空間・関係者による協議を、課題・過程の両面において地域に開くことが学校協議会制度の発展課題として位置づけられる、 ということを明らかにした。
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