研究課題/領域番号 |
22530860
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
片岡 弘勝 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10224437)
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キーワード | 教育学 / 社会教育 / 住民主体の学習 / 課題化学習 / 地域概念 / 個と集団 / 上原專祿 / 生涯学習 |
研究概要 |
本研究の目的は、3年間で、住民の主体的な課題化学習の成立条件と当該フィールド「地域」における「個志向と集団志向の動態性を生み出す緊張力学」との連関構造を解明することである。1年目の平成22年度には、「1理論研究」及び「2理論研究」により、地域概念モデルの再設計を試みた。そのモデル構成要素(要件)として、(1)「自然村的秩序」のもつ内発的エネルギー、(2)「中央」勢力圏に対する自立志向、(3)生活・生産圏の異心円的複合構造、(4)「個志向と集団志向の緊張力学の備え、というこれまでの4点のみならず、これら4要素(要件)の基盤に、(5)として「地域の生活価値・生産価値」及び「地域における合理的知」を不断に相対化する契機(上原專祿における「史心」精神)を醸成するエートスが存在することを加えた。 平成23年度は同モデルに即して下記の四つの実践事例における主体性形成の筋道・当該地域概念の検証(「3実践分析と仮説の検証1・農漁村」及び「4実践分析と仮説の検証2・都市住宅地」)を行った結果、下記の成果が得られた。A愛媛県宇和島市遊子漁業協同組合B長野県下伊那郡松川町の健康学習・教育実践、C大阪府貝塚市内の地域福祉ネットワーク、D奈良市富雄地区の安全・安心のまちづくり実践(Aは資料分析、B、C、Dはインタビュー調査及び資料分析) ・前記地域モデル要素の(1)~(4)は平成19~20年度科研費による調査研究で検証済み。 ・今回の研究では新たに(5)も検証された。Aについては海の汚れ調査での集団による相対化契機とそのエートスの存在を、B、C、Dのすべてについてグループ内における<個と集団>両方の見地からの相対化契機とそのエートスの存在を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9.研究実績の概要」に既述した本研究の目的を達成する上で、「3 実践分析と仮説の検証1・農漁村」及び「4 実践分析と仮説の検証2・都市住宅地」に関する調査研究により、充分なデータと情報を得ることができた。前記した地域概念モデルの構成要素に関する検証を充分に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成24年度には、当初の計画通り、「5 地域概念の農漁村ケースと都市住宅地ケースとの比較考察」により、内発的な学習意欲の持続による課題化学習の組織化と進展を支える日本的地域概念モデルを再々設計し、「6 総括・地域概念の日本的形態と主体的課題化学習の成立との連関構造の総括的整理」を行う。 こうして、住民の主体的な課題化学習の成立条件と当該フィールド「地域」における「個志向と集団志向の動態性を生み出す緊張力学」との連関構造を考察する予定である。
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