研究概要 |
イギリス、アメリカ、日本の比較研究を行い、義務教育費の公的負担、私的負担に関するしくみに関し、以下のような研究成果をえた。 ① アメリカの財政保障の理念である「公平性」と「適切性」にならい、日本の財政保障の実態を「経常的経費」と「目的的経費」から分析し、義務教育費の構成および負担の在り方をモデル化した。② イギリス、アメリカにおける昨今の教育改革においては、財政、教職員の給与システムおよび教員配置を中心として、学校における意思決定の重視、学校裁量権限の強化、すなわち学校分権化の過程を詳らかにした。③ 「経常的経費」と「目的的経費」という分析枠組みを、学校教育の標準性の保障と個別的な充実を同時にめざす「基準」と「規準」という理論枠組みとしてさらに発展的に捉えることが可能であるとの提案を学会報告等で行った。④ イギリスにおいて、地方教育行政機関から離脱して国直属の学校となる、新しいタイプの公立学校、アカデミーの動向について文献研究を行った。すなわちアカデミーは、国から直接、学校予算を受け取り学校理事会の承認のもと執行する。こうした学校はイギリスの全公立学校25,000校のうち、一割を占めるまでに拡大しており、こうした学校の拡大が学校財政においてだけでなく義務教育の質保障においてどのような意味をもつのか、今後さらに調査研究を進める必要がある。 なお、②については、『学校事務』(学事出版)における一年間の連載記事「英米最新事情-学校分権の光と影」(平成23年4月号~平成24年3月号)として公表した。
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