1、国際成人教育会議に関する分析 (1)2009年12月に開催された第6回国際成人教育会議について、その成果と課題を、同会議の歴史に関する研究成果と第6回会議への準備過程からの参与調査を踏まえ、成人教育の国際的ネットワークの発展と国内の運動との関係という観点から検討した。国際NGOの働きかけにより、同会議準備過程を通じて各国内の成人教育関係組織間及び政府との共同討議の場が萌芽的に生まれたことを日本国内の事例に即して確認し、また政府に課せられた「ナショナル・レポート」に対して、日本では市民社会組織が独自に国内の政策・実践を分析した「市民社会組織レポート」がまとめられ、国内外に発信されたことの意義と課題について、現在進行中の同会議フォローアップ過程に位置づけて、今後、実践的に検討していく必要性も確認できた。 (2)第6回国際成人教育会議の準備過程で生まれてきた成人教育に関する新たな思想と運動について、それらの内容は、日本の社会教育法理念とその運動的発展である権利論に呼応するものでありながら、学習者理解の階層問題を踏まえた文化革新的展開と、学習者運動の国際的展開という点で、それぞれ先駆性があることを解明した。 2、ICAE(国際成人教育協議会)本体の資料収集 同協議会の事務所を訪問し、事務所の観察とともに現事務局長セリータ・エカー氏に、同氏が事務局長となり、同協議会の事務所がトロント(カナダ)からモンテビデオ(ウルグアイ)に移るまでの経緯と氏の考え、氏の1970年代の軍事政権下も含めた運動体験についてインタビュ」することができた。またウルグアイの現在のノンフォーマル教育政策担当者へのインタビューと、エカー氏と司世代で長く同国で女性運動を担ってきた歴史研究者へのインタビューも行うことができた。 これによって、同協議会の近年の積極的施策の実践的・政治的背景に、ウルグアイの歴史と民衆運動の体験があること、現政権の先進的な「参加」政策があることが分かってきた。
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