研究課題/領域番号 |
22530884
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研究機関 | 浜松学院大学 |
研究代表者 |
津村 公博 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (30310551)
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研究分担者 |
澤田 敬人 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20254261)
白鳥 絢也 星槎大学, 共生科学部, 講師
松尾 知明 国立教育政策研究所, 総括研究官 (80320993)
緩利 誠 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 講師 (80509406)
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キーワード | カリキュラム論 / 多文化教育 / 学力問題 / 第二言語習得論 / 母語保持 |
研究概要 |
ポートフォーリオを活用する学習効果をカリキュラムに反映させる研究成果について簡単に述べる。 本研究に参加した南米日系人の青少年は、ポートフォーリオを活用する学習活動に要求される学習ストラテジー(認知ストラテジー及びメタ認知ストラテジー)の使用が極端に欠如していることが認められた。 メタ認知ストラテジーについて:自ら設定した学習に臨むに当たり、自分の思考や行動そのものを対象化して認識し、自分自身の認知行動を把握することができる能力(メタ認知的能力)著しく欠如している。本研究に参加している外国人の青少年には、学習目標の設定や学習目標を実現するための中長期の学習計画の作成には、初期段階から相談や助言の支援をしている。しかし、個々の学習者の学習の遂行を見守りながら学習支援継続的に行ったが、学習を管理することができない状態に度々陥った。また、短期間に設定した学習成果も適切に自己評価できないため、学習計画の修正や強化ができない状態に陥る受講者も多かった。 認知ストラテジー:課題に取り組む時の学習活動が単一的で、課題解決に向けて多様な認知ストラテジーを駆使することができない実態が明らかになった。高い学習効果を示す学習者は、低い学習効果を示す学習者よりも多様な学習ストラテジーを高頻度で使用する傾向があるが、外国人の青少年の場合にも同様の傾向が見られた。しかし、多くの受講者は学習ストラテジーの使用の認識を持っておらず、自律学習を行えない者もいた。これは、受講者の多くが学齢期に教室での多様な学習形態への参加の経験や家庭で自学実習の経験の不足から、自ら学習を管理する能力が十分に育っていないからである。 今後、カリキュラムにポートフォーリオを導入するには、個々の外国人の青少年がどのような学習ストラテジーをどの場面でどのように使用するのかを検証しながら、カリキュラム構築を検証する必要がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象者が在籍する静岡県浜松市設置の学び直し教室は計画通りに授業が実施された。そのため本研究を実施するフィールドを維持できたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
ポートフォリオを活用した学習活動には受講者による学習の自己管理が要求される。そのため、ポートフォリオを使用する学習活動は、学習活動に対して主体的に関わる姿勢を持つ者、学習活動への自信を持つ者、自己を肯定的に意味づける者に対して有効的な学習方法である。しかし、本研究に参加している南米日系の青少年は、学習活動に対して自信がなく、否定的な感情を持つ者が多く、ポートフォーリオを活用した学習活動に戸惑う受講者もいた。一方、南米日系人の雇用は、経済不況以降依然不安定であり、高い出席率は望めない状態である。今後とも、カリキュラムには、学習内容の確実な定着を図るための自律学習を促進する必要がある。そのため、個々の学習者の学習活動に関わる個人差(変数)を考慮しながら、効果的なカリキュラムを構築していく。
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