平成24年度は、移民をめぐる現在の英国の社会的政治的問題状況に対し、シティズンシップ教育の可能性について具体的に明らかにすることを研究目的としていた.とりわけ、シティズンシップ教育を政治教育としての意義を明らかにし、その実践のあり方を模索することは重要な課題であった.その際、英国で導入されたシティズンシップ教育の枠組みを構築したB.クリックの政治研究の成果を再検証し、それに基づいて英国の若者の政治的リテラシーの向上に取り組んでいるハンサード協会の実践は,若者に対する政治教育の取組が,多元化社会に揺らぐ民主主義の再構築を可能にするものであると示唆するものであった.前年度においては,政治教育についてのこうした考えについて,ヨーロッパ各国の状況について明らかにすることを課題とする重要な先行研究や国家社会論等の理論研究を整理し,研究の理論的枠組みを構築した.本年度は,こうした理論枠組みを検証するために,英国で調査研究,資料収集を行うため,2012年9月1日から10日間にわたり,教育省,ビジネス情報スキル省,ウォナース及びシャムリー小学校,ローディング・バレー高校などを訪れ,各関係者を対象として聞き取り調査を行った.学校での調査においては,特に英国におけるシティズンシップ教育の実際や教員の研修について,関係者に話を聞くことができた. 上記したような活動の成果として,「共生のための教育―民主主義の再建を課題とするシティズンシップ教育ー」(南山大学・人間関係研究センター『人間関係研究』第12号),また,本研究のテーマと関わって,特に小学校での調査によって得た成果として『学校運営協議会と『教員の質』―教員の職能開発における学校運営協議会制度の可能性と課題―」(日本教育行政学会『日本教育行政学会年報38』)の2本の論文をまとめた.また,日本教育行政学会第47回大会において研究発表を行った.
|