研究概要 |
本研究の目的は、自治体財政難が公立博物館に及ぼす影響について、戦後の公立博物館成立期から現在、将来に至る長期的視野から分析を行い、地域の実情に応じた博物館運営の可能性を探ることである。研究初年度は以下の内容を実施した。1.神戸市立須磨海浜水族園において、市の外郭団体から民間共同事業体へ指定管理者の交代が行われたため、その経緯と課題を調査・検討し、全日本博物館学会で口頭発表した。2.この調査の過程で、指定管理者公募の際の応募書類の公開が不十分であることに疑問を抱き、神戸市長に対して異議申立てを行った。この間の経緯を含め、日本社会教育学会においてラウンドテーブル「指定管理者制度と情報公開」を企画、田中孝男氏に法的課題を整理していただき、参考資料とともに『Musa』25号に掲載した。上記1,2の研究で、自治体の財政難を背景に、博物館への指定管理者制度の適用が進む中、弊害を防ぐには、制度設計の基本思想「企画と執行の分離」を適切に実現するためのモニタリングが欠かせないこと、しかし自治体側の情報公開制度の運用が不十分であることを指摘した。3.日本社会教育学会で「自治体財政の変動が公立博物館に及ぼす影響」の口頭発表を行い、中央集権的な階層化・分業化の孕む問題を見据えつつ、経済成長期型の博物館設置政策から、財政縮減期には資料の次世代バトンタッチ型政策に移行する必要性を問題提起した。4.公益法人制度改革については、第92回近世古文書研究会にて「博物館管理運営財団の公益法人制度改革への対応について」、滋賀県博物館協議会平成22年度第2回研修会・情報交換会にて「公益法人制度改革と博物館」を報告、制度を解説し、最新の公益法人制度改革への対応状況について情報提供した。この折の報告・調査内容は、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会近畿部会会報『Network』No.43及び『Musa』25号に掲載した。
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