本研究の目的は、フランスのアニマトゥール(animateur社会教育関係職員)の専門職性とアイデンティティの形成の今日到達点を明らかにすることである。本年度は、近年急速に進んでいるアニマトゥールの地方公務員化の意味を、自立性と専門職性を柱としたアニマトゥール労働の公共的役割の広がりと高まりを示すものとして分析した。そこで明らかになったことは、以下の通りである。 (1) アニマシオン活動を、余暇活動のようにすでに確立した活動だけにとどめるのではなく、地域のニーズを広く受けとめ、それを独自のメティエ(職 metier)として広く認知される専門職性を伴った職務と研修を創り出している。(2)対象別・機能別のアニマシオンではなく、市町村全体の計画の中にアニマシオンを位置づけ、アソシアシオンの機能的活動に対し、地域を軸としたアニマシオンの可能性のアプローチを生み出している。その実践の中でアニマトゥールとしてのアイデンティティ形成が志向されている。(3)地方公務員アニマトゥールの地位や専門職性は、地域実践で求められる内実に比してその脆弱さは依然免れないが、制度的に職業資格と結びついた採用・研修のあり方が追求されている。(4)アニマトゥールの公務員化の背景には、昨年度の研究で明らかにしたアソシアシオンで働くアニマトゥール労働部門の確立がある。そのことは、市民社会における活動が活性化することで、公務員労働も発展していくという関係を示している。つまりアニマトゥールの地方公務員化は、アソシアシオンの役割を小さくしたのではなく、専門職性の内実の確保、市民社会の強化という課題を背負って、ますますその存在意義を高めている。
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