平成22年度は、ロサンゼルス補習授業校あさひ学園高等部の在籍者の調査と卒業生についての追跡調査を行った。在籍者については、4名を対象に、これまでの生育歴、学校歴(どの学校に通っていたか)、現地校の様子、進路希望、放課後の過ごし方、メディアの接触度、日本語の歌・アニメ・テレビ番組などに触れる頻度、補習授業校への就学理由、期待、交友関係、現地校の学習・生活の様子、日本との関わりかたについて、インタビュー調査を実施した。卒業生については、対象者を選定するための追跡と調査の承諾の確認作業を行った。この他、ロサンゼルスのパロスベルディスペニンシュラー学区のパロスベルディスペニンシュラー・ハイスクールでの観察を実施した。 その結果、永住者・国際結婚家庭の子どもの中には、アメリカよりも日本の大学への進学を視野に入れ、補習授業校では日本語の小論文を、現地校では日本の大学入試に有利なSAT(大学入学資格試験)のうち数学の学習、TOFLEを重視するといった戦略をとっていることが把握できた。進路選択を有利に進めるためにアメリカと日本の双方の社会資源を活用し、補習授業校も自らの戦略に応じて主体的な意味づけを行っていることが把握できた。また、卒業生に対する予備的な調査では、2000年前後を境に、アメリカでの大学進学や就職から、日本の大学への体験入学や留学、そして日本での就職などが増加しているものの日本に定着するのではなく、「外資系企業」への転職などもみられた。この点については継続的に調査を行っていきたい。
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