本研究は、義務教育段階の学校(小・中学校レベル)における教室内のジェンダー形成およびその教室環境や社会・文化的背景を、日本とスウェーデンで比較検討することによって、日本の男女平等教育の課題を明らかにすることを目的としている。本年度は研究期間の最終年度であり、主に次の二点を中心として研究を進めた。 ①海外共同研究者と、昨年度に実施した日本での学校観察に関して研究会を開催し、それぞれの観点から討議し報告書にまとめた。教師による統制がよくとれている日本の教室では、多くの場合、教師が公平性やジェンダーバランスに配慮していて、ジェンダーが現象として表面化する場面が少なかった。しかし概して日本では、児童・生徒の個性の発露が抑えられていることが示唆された。一方で、教師と生徒との関係が密で、教師が生徒の状況をよく把握し、教育的な関わりを持とうとしていることから、今回の観察では明確にはできないが、教師のジェンダー意識や態度が生徒に対して、スウェーデンよりもより強い影響力を有するのではないかと推察された。 ②夏秋授業休業期間を利用して渡瑞し、昨年度に引き続いてスウェーデン・ノルショーピンの小・中学校における学校観察および教師・生徒へのインタビュー調査を実施した。中学の体育教師にインタビューした結果、競争的な競技については学校外の地域クラブ活動の場があるので、学校での体育には競争よりも協調を重視しており、男女混合での体育の授業を行っているとのことであった。昨年度より継続しての観察であることから、対象の生徒(女子のみ)にグループインタビューも実施することができた。その結果、スウェーデンの中流階層家庭の女子にとって、専業主婦の選択肢はほぼ念頭にないこと、性別に平等に対応しない教師に対する反発心が強いこと、友だち関係においてはジェンダーが大きく関わっていることなどを明らかにしえた。
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