研究課題/領域番号 |
22530910
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
金子 真理子 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (70334464)
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キーワード | 教育社会学 / 学校組織 / 教員文化 / 教員評価 / 高校教師 / 教職 |
研究概要 |
本研究の目的は、行政主導の「教職のメリトクラシー化」の動向と、それに対する教師の意識と行動を分析することによって、これまでの教員社会の中で構築されてきた教職という仕事の特徴や専門性に迫ると同時に、その変容の兆候について検討することである。平成23年度は、5名の高校教師に個別インタビュー調査を行った。インタビュー時間は、一人あたり1.5時間から3時間である。また、多数の教師と集団で懇談した。 学校組織のありようは次第にボトムアップ型からトップダウン型に変わりつつあるが、管理職の目標の掲げ方や教職員とのコミュニケーションプロセスは多様な側面を残している。そのような多様性が、教職のメリトクラシー化の展開のあり方にどのようなオプションを与え、教職員の意識や行動をどのように変えていくのかについて、分析を進めているところである。 だが同時に、学校組織のあり方を再検討する上では、3月11日の東日本大震災と原発事故の影響を見逃すことはできない。原発事故は、私たちがリスク社会の中に既に生きていたことを気付かせるのにあまりある。それでも学校は、「日常を取り戻す機能」を素早く発揮した。しかしながら、たとえ「表面的な穏やかさ」が戻ったとしても、社会や保護者の不安とのはざまで、葛藤を抱えている教師も存在する。三・一一後の学校を振り返った教師たちの言葉の中には、これまで自明視されてきた学校の形態や機能と、それを形成する当事者としての教師自身の自覚をも、問い直そうとする契機が潜んでいた。保護者や教師の声が、学校の「日常」をどのように創り変えていけるのか、そのための学校組織のあり方についてもさらに検討を加えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高校教師へのインタビュー調査を継続的に実施するのみならず、多数の小・中・高校教師と懇談することにより、教職の仕事をカリキュラムの問題と絡めて検討するという分析枠組みを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、リスク社会におけるカリキュラムのあり方を検討したうえで、教職という仕事をあらためて問い直していく。第一に、学校はリスクを含めた社会の状況をどのように伝えているのか、カリキュラム編成の背後にある思想、カリキュラムとしての体現、それを遂行する教師の認識と能力、多様な意見の取り扱い、といった問題を含めて、教職という仕事の特質を明らかにする。第二に、教師がそのような教職という仕事を遂行するために、いかなる学校組織が有効なのかを検討していくために、日英両国における現在の学校組織の現状を調査すると同時に、現行組織に対する教師の認識について明らかにする。第三に、教職という仕事にとって、教員評価、学校評価、教職のメリトクラシー化といった動向がどのような意味をもつのかを社会学的に検討すると同時に、教師、生徒、保護者の声が、学校の「日常」をどのように創り変えていけるのか、そのための学校組織のあり方について検討を加える。2012年9月より1年間、ロンドン大学を拠点に調査と論文執筆を行う。
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