研究課題/領域番号 |
22530911
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤村 正司 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (40181391)
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キーワード | 社会貢献 / 新制度主義 / 管理運営 / アカデミック・プロフェッション |
研究概要 |
グロナーカル化する社会のなか、知識基盤社会という課題に応えるため、大学が重要な役割を担っている。本研究の目的は、大学の社会貢献に焦点化し、将来にわたって持続可能性なものとするために大学の活動主体と地域社会の連携団体の関係、教員の社会貢献に対する誘因を社会学的に分析することである。 平成23年度は、研究計画にもとづいて大学の社会貢献事業について理論研究と実地(証)研究を進めた。理論研究では、高等教育組織論と新制度派社会学の文献を収集し、国の社会貢献事業の波及効果を説明する「公共政策論」、「高等教育政策論」、「組織フィールド論」、機会均等論などを詳細に検討し、大学の社会的貢献事業を多元的に捉えるフレームを確立した。 「実地(証)研究」では、三つの事例と二つのアンケート調査の分析を行った。事例の第1は、社会貢献プログラムの助成(GP)を受けた大阪教育大学(教員研修)と大阪市教育委員会、柏原市の連携。第2は、統合移転後の広島大学における社会連携推進機構と自治体連携団体の関係。第3は、新潟県を事例に、県内大学と最寄りの自治体との連携協約について資料収集とインタビュー調査を含むフィールドワークを実施し、10年前の調査と比較した。いずれも連携の体制づくり(包括協定)、スタッフの確保、交流ノウハウ、財政措置など、社会貢献事業を持続的に行う上で困難さを抱えていること、大学と地域を繋ぐ「組織フィールド」(界)をいかに構築するかが、社会貢献事業の持続可能性において重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、教員アンケート調査から大学教員の管理運営や意思決定に対する認識が集権化していること、経済的不況と少子化の中で地方国立大学の人材供給機能が低下していること、また大学の教育機会供給機能がとくに女子の大学進学機会を阻害している事実を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究と実地調査にややウエイトがかかり、当初予定していた自治体、及び関連団体すべてに調査票を配布することができなかった。また、震災の影響を考慮して岩手大学及び岩手県地方公共団体関連機関へのアンケート調査を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる平成24年度は、「理論研究」と「実地調査」で得られた知見に基づいて、地域社会と大学の連携の実際に関わるアンケート調査を設計し、4つの自治体関係課(群馬県、大阪府、佐賀県、新潟県)、文化・福祉・教育団体を対象とする機関アンケート調査の実施と集計を行う。具体的には、『自治体年鑑』に記載される県および市町村総務課、教育委員会、市民文化団体、高等学校長、小中学校長、病院長などを対象に、地元大学との連携の広がりを明らかする。計画の変更点として、大学院生の受け入れについて加える。このことで大学の社会貢献事業の持続可能性をはかるための立体的な政策的提言を策定し、知識基盤社会における大学の社会貢献事業の持続可能性と大学組織存立の方向性を探る。
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