研究概要 |
3か年の研究計画の初年度にあたる平成22年度には,以前の研究成果をふまえたうえで,東アジア諸国・地域(対象は中国,台湾,香港,韓国,日本)の高等教育制度および大学院入学者選抜制度に関する文献資料の収集・分析を行うとともに,個別機関を訪問して聞き取り調査を実施した。前者については,関連する日本語・英語・中国語文献の収集を行い,歴史的変遷および現行制度の分析を進めた。後者に関しては,中国(北京師範大学,中央教育科学研究所)と香港(香港大学)で大学院入学者選抜制度に関する聞き取り調査を行い,関連情報の収集を行った。本年度の研究成果としてはまず,各国の高等教育制度に関する比較的分析を通じて,どの国(地域)でも近年量的拡大や各機関の運営自主権の拡大が見られることを明らかにした(『現代教育改革論』第8章)。これらは,大学院入学者選抜制度の前提となる重要な方向性であると考えられる。また,中国に関しては,「社会主義国の体制移行に伴う教育変容-ベトナムと中国を中心に-」(『京都大学大学院教育学研究科紀要』第57号,関口洋平と共著)において,ベトナム,そして旧ソ連(ロシア)との比較により,改革の方向性やその特徴について検討するとともに,体制移行と教育改革との関係について仮説的な枠組みを提示した。これに加えて,大学院入学の前提となる大学卒業認定のあり方について検討し,その中国的な特徴を明らかにした(第17回大学教育研究フォーラム(主催:京都大学高等教育研究開発推進センター),2011年3月17日)。
|