平成22年度は研究の初年度であることから、まず理論研究として「鑑識眼」および「学習ポートフォリオ」「実践的思考様式」に関わる基本的研究資料の収集を行った上で、以下の研究を行った。 (1)協力学校において熟達教師・若手教師を対象にした自らの「鑑識眼」についての認識調査と、若手教師の専門的力量育成プログラム実施に向けての打ち合わせを行った。下記の学校とは既に授業研究にかかわって共同研究関係にあるが、改めて今回申請の課題についての協力の依頼を行い、調査・実施の進め方および対象となる熟達教師・若手教師の選出について協議を行った。(協力学校:兵庫県伊丹市立花里小学校、兵庫県西宮市立今津小学校、神戸大学発達科学部附属住吉小学校) (2)協力学校の熟達教師と若手教師の研修実態を継続的に参与観察し、新たな研修方法の視点を検討した。とりわけ平成22年度は「鑑識眼」の育成を目的視した授業研究会の在り方に焦点化し、「鑑識眼」育成にあたっての具体的視点、熟達教師と若手教師の共同的活動の具体的内容と手順を明確化し、「鑑識眼」育成プログラム作成への足がかりとした。この内容に関しては、日本学校教育学会第25回大会で発表した。 (3)若手教師が自覚的・自己修正的に力量形成してくために活用されるポートフォリオの構築方法について、主にメタ認知にかかわる文献研究を通して検討を行った。具体的には、第一に、ポートフォリオと「鑑識眼」育成プログラム全体との関係性の検討、第二に、若手教師のポートフォリオ構築にあたっての熟達教師の関与の在り方の検討、の二点である。 平成22年度の研究を踏まえて、平成23年度は、協力学校の授業研究会を核とした熟達教師と若手教師の共同的活動の事実を長期的・継続的に参与観察し、「鑑識眼」育成プログラムが機能するために必要な要件について精緻化を図りたい。
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