研究課題/領域番号 |
22530918
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
勝見 健史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (20411100)
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研究分担者 |
佐藤 真 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (20324949)
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キーワード | 教師文化 / 専門的力量 / ポートフォリオ / 鑑識眼 / 授業研究会 |
研究概要 |
平成23年度は、初年度に引き続き「鑑識眼」および「ポートフォリオ」「実践的思考様式」に関わる理論研究、および、協力学校の熟達教師と若手教師の研修実態について継続的に参与観察を行った上で、以下の研究を行った。 1.平成22年度の研究成果と方向性を視座として、熟達教師が若手教師に関与しながら共同的に「鑑識眼」を育成していくための中核の機会となる授業研究会の在り方に焦点化し、協力学校の事例を通して新たな研修方法の内容の検討を行った。とりわけ平成23年度は、授業研究会を核にして鑑識眼の育成をどのような教員研修システムとして運用していくのかという全体像について構造化を図った。その内容の一部は、日本学校教育学会学会誌『学校教育研究・第26号』において査読付論文として発表した。 2.授業研究会を包含した「鑑識眼」育成プログラム全体におけるポートフォリオの位置づけを明確にし、特に授業研究会前後の若手教師と熟達教師のポートフォリオを介在した共同的活動、すなわち、ポートフォリオを介在して「いつ」「誰が」「どのように」若手教師の成長を支援するのかについての内容と方法について協力学校への参与観察を通して:事例的な検討を行った。また、若手教師がポートフォリオを通して自己の成長を自覚化するための具体的な視点について、協力学校への参与観察を通して事例的な検討を行った。とりわけ、成長の自覚化の視点の一つである形成的な指導と評価における教師の鑑識眼の重要性について、国語科の事例を教育開発研究所発行の研究図書の一部として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である若手教師の鑑識眼育成プログラム構築の要件として、(1)授業研究会を核とした鑑識眼育成プログラムの全体像構築、(2)核となる授業研究会の具体的運用方法の明確化、(3)授業研究会における学びを蓄積・更新しながら成長の自覚化を図るポートフォリオの位置づけ、の3点が必要である。(1)については、日本学校教育学会学会誌において査読付論文として掲載され、授業研究会を核とした鑑識眼育成プログラムの意義について一定の評価を得た。現在さらに、(2)について、鑑識眼育成のための枠組みの抽出を試みながら、鑑識眼育成プログラムの核となって位置づく授業研究会の内容と運用手順の策定が進行している。また、これに並行して、(3)について、ポートフォリオを介した熟達教師と若手教師の共同作業の内実と、若手教師の成長の自覚化をどのように図るかという点について、研究分担者の研究成果を手がかりに、カンファレンスの要諦とポートフォリオの具体的な運用方法を検討している。これらの研究成果を総合的に判断すれば、(1)(2)(3)の各要件の内実について具体的検討が進展しており、鑑識眼育成プログラムの構築がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成24年度は、並行して検討を進展させている「鑑識眼育成に機能する授業研究会の具体的運用方法の明確化」「鑑識眼育成プログラムに包含されたポートフォリオの具体的運用方法の明確化」を行い、若手教師の鑑識眼育成プログラムの全体像としての構築を図る。とりわけ、鑑識眼育成のための枠組みが、授業研究会の内容およびポートフォリオによる成長の自覚化の視点と連動することが重要であることから、各論における研究成果の相互還流、相互調整を重視しつつ研究の精緻化を図りたい。一方、協力学校における熟達教師および若手教師の転勤が発生し、ポートフォリオにおける共同的活動の継続的な観察が分断する事例が発生しているため、各協力学校で参与観察が可能な対象と場面を再度焦点化することによって、一人の若手教師の成長過程に機能するためのポートフォリオの在り方として再構成し一般化を試みる。なお、平成24年度末に研究成果を科学研究費研究報告冊子として書面化し、協力学校以外の学校においても活用できるよう成果の還流を図るものとする。
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