最終年度である平成24年度は、主に下記の4点の研究を行い、小学校若手教師の「鑑識眼」育成のプログラムとしての全体像の構築およびその成果の検証を行った。 第一に、授業事後研究会の運用方法の検討である。「鑑識眼」育成の視点を包含した授業事後研究会の意義、内容および実施手順について明確化し、どの学校教育現場でも機能する一般化した様式として明文化した。とりわけ、解釈の重層性を保障するための方法として授業の構造的把握およびその構造内における特定の事実のもつ意味や価値について解釈を重ね合う場を重視した。 第二に、ポートフォリオの活用方法の検討である。若手教師が自覚的・自己修正的に成長していくためのポートフォリオの具体的な活用方法を、授業研究会と連動した形で検討した。とりわけ、若手教師および熟達教師が記載するワークシートの内容・形式・使用方法や対話場面の設定方法等について具体化した。 第三に、育成プログラムとしての全体像の構築である。第一、第二の検討を踏まえ、ポートフォリオを活用した「鑑識眼」育成のプログラムとして全体の構成化を行った。育成プログラムは、実施手順、各段階における実施内容、方法等の可視化を図り、どの学校でも援用できるように配慮した。 第四に、本研究の成果としての事例の抽出と考察である。協力学校への継続的な参与観察を通して、若手教師の「鑑識眼」が洗練された次の事例を抽出し考察を行った。まず、授業事後研究会後の対話場面において、若手教師が熟達教師から特定の事実に対する解釈の重層性について助言を受けながら「鑑識眼」が洗練されていく事例を抽出し考察を行った。また、ポートフォリオを介在して熟達教師の関与を受けることによって、若手教師が達成感・肯定感を感じながら自覚的に成長していく事例を抽出し考察を行った。 以上の研究経過および研究成果を「研究成果報告書」としてまとめ、刊行した。
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