本研究の目的は、全国最下位の沖縄の学力をどう向上させればよいかについて、高校生を対象とした質問紙調査に基づいて検討することである。質問紙調査では、沖縄県の県立進学校3校、県外(静岡県)の県立進学校1校、合計1264名を3年間追跡してデータを得た。 この中で明らかになったことをいくつか挙げておきたい。第一に、沖縄県の高校生と県外の高校生の間にはかなりの学力差があることが確認された。両県のトップレベルの進学校同士を比較しても、偏差値にして約5の差が見られた。第二に、沖縄の学力の低い背景として、生活習慣の乱れがあることが明らかになった。朝食の摂取率等にも差があり、食生活や睡眠の乱れ等が学力を引き下げている可能性が見出された。第三に、県外の生徒は1年生から3年生にかけて学力の向上もしくは維持が見られるのに対して、沖縄の生徒は3年生になってから学力が落ち込むという傾向が見られた。ラストスパートがなかなかきかないのである。第四に、そうした中でも、1年生から3年生にかけて学力が伸びていく沖縄の生徒も一部見られた。そうした生徒の持つ特長としては、「クラスに励みになる友達がいる」「クラスに勉強を教え合える友達がいる」「クラスによいライバルがいる」といった、友人関係を重視していて、共に高め合える友人がいるということであった。 このことから、沖縄の高校生の学力を向上させるためには、友人関係を基盤として、共に高め合う関係を構築し、共に頑張るという雰囲気を作ることが指導上重要であると考えられる。つまり受験勉強は一人でやるものではなく、いわば「受験は個人戦ではなく団体戦」という考え方である。 以上のような研究成果の一部は、2012年11月に琉球新報社から発行された『どうする「最下位」沖縄の学力』により公表されている。
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