研究者はこれまでに生活適応の観点から高齢者の健康増進を図るプログラムを開発し,その有効性を実証している.本研究はその大学生バージョンとして,ステューデントアパシーやユニバーシティーブルーなどと表される大学生を対象とした「大学生活適応プログラム」の開発を進めた.本プログラムの特徴は,当事者である学生に自己評価の手法を教授することで,学生が自分の判断で自分にとって必要な行動を同定し実行できるようにする点にある.これは教職員による助言や学習相談,各種の研修を実施するような従来のやり方とは全く異なるものである. 本研究では,申請者が先に開発し実証された高齢者向け生活適応プログラムを大学生向けに改変し,試行運用を行い,その有用性を検証した. 国公立大学3校および私立大学1校に通う1-3年次学生262名(女性170,1年生96名,2年生112名,3年生54名)を対象とした調査から、男女比較において「女子学生は比較的,ソーシャル・サポートに恵まれた環境にあること」「男子学生は学習意欲が有意に低く,さらに教員不満,講義内容不満,履修不自由感が高いこと」、また学年別では高学年になるほど総じて良好な方向に変化することが明らかとなった。 「大学生活適応プログラム」には全国3校から72名が参加した。実験群37名、対照群35名に分け、プログラム実施前後の変化量の比較を行った結果、ソーシャル・サポート(友人)(1.6 vs. -0.2)、リアリティショック尺度の下位尺度「時間拘束感」(-0.1 vs. 0.3)で有意差が認められ、いずれも実験群が良好な結果であった(p<0.05)。本研究で実施したプログラムが、学生の友人間のソーシャル・サポートや時間拘束感に良好な影響を与える可能性が示唆された。
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